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犬 · MMVD
僧帽弁閉鎖不全症
動物病院で言われたら
中高齢の小型犬で「心雑音がある」「心臓が悪い」と告げられた場合、その約8割がこの病気です。
アイの、そっとささやき
アイの、そっとささやき
僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)は、多くの高齢のワンちゃんが向き合うことになる病気です。早めに気づき、適切なケアを始めるほど、一緒に過ごせる時間は長くなります。まずは今の段階を正しく知ることから始めましょう。
30 秒でわかる、この病気について
静かに進む変形·咳などの症状が出るずっと前から、心臓の形は少しずつ変わっていきます。
5 つのステージ·ACVIM ガイドラインでは A / B1 / B2 / C / D の 5 段階に分類されます。お薬を始めるのは Stage B2 からです。
元気な時間を延ばす·Stage B2 でピモベンダン(強心薬)を始めると、心不全になるまでの「元気な時間」を平均で約 15 ヶ月延ばせることが分かっています。
心不全までの「元気な時間」は
どれくらい延びる?
+15ヶ月
+15
ヶ月
心不全になるまでの「元気な時間」が平均で約 15 ヶ月(462 日)延びたことが、大規模試験で示されています。
※ 360 頭のワンちゃんを対象とした大規模な比較研究における、心不全発症までの中央値の比較。延長された時間は「元気な時間」であり、心不全になった後の余命とは別の概念です。
100 頭で見ると、こんな違いに
お薬を飲んだ 100 頭と、飲まなかった 100 頭の比較です。
お薬を飲んだ場合
67
頭 / 100 頭のうち
が心不全にならずに過ごせました
飲まなかった場合
57
頭 / 100 頭のうち
が心不全にならずに過ごせました
※ 100 頭のワンちゃんに換算した数で示しています(試験全体の追跡期間)
「心雑音があります」と言われたあとに、
知っておきたいこと
心雑音があっても、愛犬が元気にしていると、つい安心してしまいます。ただ、この心臓の病気には「症状は出ていないけれど、心臓はずっと拡大している」段階(Stage B2)があります。この段階でお薬を始めるかどうかが、その後の「元気な時間」の長さに関わります。
お薬を始めるタイミングについて
心雑音があるだけでは、すぐにはお薬を始めません。「心臓が拡大し始めたこと」が 3 つの数値で確認されたときに、初めて治療を検討します。
- —
心房のふくらみLA/Ao ≥ 1.6
血液を一時的にためる部屋(心房)が、大動脈の 1.6 倍以上にふくらんだ状態です。
- —
レントゲンで見た心臓の大きさVHS > 10.5
胸の骨(椎骨)を基準にした、レントゲン上の心臓のサイズです。
- —
心臓のポンプ室の大きさLVIDdN ≥ 1.7
体重で補正した左心室(血液を全身に送り出す部屋)の広がりを示します。
これらのうち 2 つ以上を満たしたときに、Stage B2 と判定され、ピモベンダンの開始が推奨されます。
お薬で延ばせる「元気な時間」
Stage B2 でピモベンダンを始めたワンちゃんは、始めなかったワンちゃんと比べて、心不全になるまでの時間が平均で約 15 ヶ月長かったことが示されています。
+15ヶ月
心不全までの「元気な時間」の延長
36%
心不全を起こすリスクの低減
ピモベンダンというお薬について
ピモベンダン(商品名:ベトメディンなど)は「強心薬」と呼ばれるお薬で、心臓の収縮を助け、血管を広げる作用があります。動物医療では 20 年以上の使用実績 があります。
大規模な比較研究では、ピモベンダンを飲んだグループと飲んでいないグループで、副作用の発生率に明らかな差はありませんでした。長期投与でも安全性が確認されています。
なぜ「ピモベンダン」が選ばれるのか
Stage B2 で使われる心臓のお薬には、ピモベンダン以外にも選択肢があります。ただし、「心不全になるまでの時間を延ばす」効果が大規模な比較研究ではっきり示されているのは、現時点ではピモベンダンだけです。
たとえば、別の心臓薬(スピロノラクトンやベナゼプリル)も同じ目的で大規模に検証されましたが、「心不全になるまでの時間を延ばす」効果ははっきり示されませんでした。ただ、これらのお薬には「心臓の負担を和らげる」という別の大事な役割があり、心不全が起こったあとの治療では中心的なお薬として使われます。Stage B2 で「心不全までの時間を延ばす」という目的に限れば、大規模な比較研究で効果が示されているのはピモベンダンということです。
「元気な時間」と「余命」の、ちょっとややこしいお話
少し誤解を生みやすいので、ここは丁寧にお伝えします。Stage B2 でピモベンダンを始めると延ばせるのは、「心不全になるまでの元気な時間」です。「心不全になった後の余命」ではありません。
2025 年に発表された研究では、心不全を一度起こしてしまったあとは、それまでにお薬を飲んでいたかどうかで生存期間に明らかな延長は見られませんでした。だからこそ、Stage B2 の段階で「心不全にならない時間」を最大化することに、早期治療の本当の価値があります。
ここがポイント
お薬は「心不全になるのを遅らせる」ためのもの。「心不全になった後の時間を延ばす」ためのものではありません。元気なうちに始める意味は、ここにあります。
お薬を長い間飲んでもらうために
ピモベンダンは Stage B2 になったら、原則として一生飲み続けるお薬です。多くの場合 1 日 2 回、決まった時間に投与します。
ただ、ワンちゃんによってはお薬を嫌がったり、吐き出したり、なかなか飲んでくれないこともあります。これは飼い主さんのせいではなく、自然なことです。獣医師と相談しながら、ペースト状のフードや投薬補助のおやつなど、その子に合った方法を見つけていくことが、長く続けるためのコツになります。
主治医への、4 つの問いかけ
このページの情報は診断を確定させるものではありません。ただ、次の診察で以下を尋ねることが、具体的な第一歩になります。
「うちの子は、ACVIM ステージでいうと今どの段階ですか?」
「心エコーやレントゲンで、LA/Aoや VHS の数値は測ってもらえますか?」
「今からピモベンダンを始めるべき段階ですか?」
「もし将来心不全を起こしたら、治療プランはどう変わりますか?」
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参考文献
- Keene BW, et al. ACVIM Consensus Guidelines for the Diagnosis and Treatment of MMVD in Dogs. J Vet Intern Med. 2019;33:1127–1140.
- Boswood A, et al. Effect of Pimobendan in Dogs with Preclinical MMVD: The EPIC Study. J Vet Intern Med. 2016;30:1765–1779.
- Borgarelli M, et al. DELay of Appearance of sYmptoms of Canine Degenerative Mitral Valve Disease Treated with Spironolactone and Benazepril: the DELAY Study. J Vet Cardiol. 2020;27:34–53.
- Park SW, et al. Impact of administering cardiac medication to small-breed dogs with preclinical MMVD on survival after CHF onset. Veterinary Quarterly. 2025;45(1):2560412.
※ 数値は統計的な参考値であり、個別の診断を確定させるものではありません。獣医師との対話の材料として活用してください。