猫の慢性腎臓病(CKD)基本を見る

IRISステージで、今の状態を知る

監修:あき(獣医師)最終更新 2026.06.25

アイの、そっとささやき

「今、うちの子はどのくらいなんだろう…」そんな不安を少しでもほどくために。 血液検査の結果がある方も、これから病院へ行く方も、一緒に愛猫の現在地を確かめてみましょう。

IRIS(アイリス)ステージとは?

「IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)」が定めたステージ分類は、世界中の獣医師が治療の基準にしている、いわば腎臓病の進行度を測る「共通の物差し」です。

血液検査の数値(おもにクレアチニンと SDMA)をもとに、初期の「ステージ1」から「ステージ4」までの4段階に分類し、適切な治療やケアの方向性を決めるために使われます。

各ステージの状態とサイン

今どの段階(ステージ)にいるかによって、必要となる食事や治療のサポートは大きく変わります。 ここでは、各ステージでどんな状態やサインが見られるのかを見ていきましょう。

ステージ1

クレアチニンは正常ですが、SDMAがわずかに高い状態や、尿を濃くする力の低下など、なんらかの腎臓の異常が見られる初期の段階です。

ステージ2

クレアチニンが正常値か、わずかに高い状態です。日常的な症状は軽いか、全く見られないことが一般的です。

ステージ3

クレアチニンが中等度に高くなります。この頃から、腎臓以外の全身的な症状がはっきりと見られることが増えてきます。

ステージ4

全身の症状や、尿毒症(体内の老廃物がうまく排泄されず毒素が溜まる状態)が起こるリスクが高まる段階です。

愛猫の現在地を確かめる

ステージの全体像が見えたところで、お手元の血液検査の結果(クレアチニンと SDMA)を入力して、 愛猫の現在のステージを確認してみましょう。

血液検査の数値を入れる

猫の基準: 1.6 未満

猫の基準: 14 未満

📌 数値が分からなくても大丈夫です。次回の診察で「クレアチニンと SDMA はいくつですか?」と聞いてみてください。

IRIS ステージ分類(2023)

4 段階の進行マップ

数値を入れると、該当ステージがハイライトされます。

Stage 1
初期
Cre < 1.6
SDMA < 18
Stage 2
軽度〜中等度
Cre 1.6–2.8
SDMA 18–25
Stage 3
中等度〜重度
Cre 2.9–5.0
SDMA 26–38
Stage 4
重度
Cre > 5.0
SDMA > 38

※ ステージ判定は、安定した状態で 2 回以上測った数値をもとに獣医師が行います。ここで表示される目安は診断を確定させるものではありません。

さらに詳しく知るための「サブステージ」(尿タンパクと血圧)

血液検査でメインのステージが決まった後は、「尿タンパク」と「血圧」の 2 つを測ることで、 さらに詳しい状態(サブステージ)を分類します。この 2 つは、腎臓への負担を加速させてしまう大きな要因になるため、定期的に確認し、状態に応じて管理していくことが推奨されています。

尿タンパク(UP/C 値)

猫の基準

非タンパク尿正常
0.2 未満
境界域
0.2〜0.4
タンパク尿
0.4 超

数字が小さいほど、腎臓にやさしい状態です。

収縮期血圧(mmHg)

猫の基準

正常正常
140 未満
高血圧予備軍
140〜159
高血圧
160〜179
重度高血圧
180 以上

数字が小さいほど、腎臓にやさしい状態です。

表示される数値は統計的な参考値であり、個別の診断を確定させるものではありません。

まとめ:明日の診察室で聞きたいこと

愛猫の現在地が少し見えてきたでしょうか。慢性腎臓病の治療は、長く付き合っていく道のりです。 一人で抱え込まず、かかりつけの獣医さんとしっかり現状を共有することが大切です。 次回の診察では、ぜひこのように先生に尋ねてみてください。

診察室で、こう聞いてみる

先生、今うちの子はステージいくつにあたりますか?

尿タンパクや血圧は、どのような状態でしょうか?

今の正確な状態を知ることが、愛猫に一番合ったサポートを見つけるための第一歩になります。

コラム

SDMA は、早期発見の鍵

従来、腎臓の健康状態を知るために最もよく使われてきたのは「クレアチニン」という数値でした。 しかし、クレアチニンは腎臓の働きが約 75% も失われるまで正常な範囲にとどまってしまうため、 初期の異常に気づきにくいという弱点がありました。一方、新しい指標である「SDMA」は、 より早い段階で腎臓の働きの低下を捉えることができます。ある調査では、SDMA はクレアチニンが 異常値を示すよりも、先に上昇した猫で平均して 17 ヶ月早く上昇を始めることが分かっています。

腎機能の低下と、検査値が反応するタイミング
腎機能:正常大きく低下 →

SDMA

早期に反応。クレアチニンより平均 17 ヶ月早く異常を捉えます。

クレアチニン

腎機能が約 75% 失われてから、ようやく数値に表れます。

愛猫の負担を減らすための食事療法などを早くスタートさせるためにも、この「早期発見」がとても大切になります。 また、継続して SDMA が 14 µg/dL を超えている場合は、ごく初期の慢性腎臓病であると診断されることがあります。

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参考文献

  • IRIS Staging of CKD (modified 2023). International Renal Interest Society. iris-kidney.com
  • Hall JA, et al. Comparison of serum concentrations of symmetric dimethylarginine and creatinine as kidney function biomarkers in cats with chronic kidney disease. J Vet Intern Med. 2014;28:1676–1683. doi.org

※ 本ページの情報は獣医師が監修していますが、個別の診断に代わるものではありません。治療方針は必ずかかりつけの獣医師とご相談ください。