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皮下点滴と、吐き気・食欲のケア
監修:あき(獣医師)最終更新 2026.06.25
アイの、そっとささやき
アイの、そっとささやき
「ご飯を食べられない」「吐いてばかりでつらそう…」そんな愛猫の姿を見るのは、 代わってあげられない分、本当に苦しいですよね。この時期は、病気を治すことよりも「今の苦痛を取り除き、いかに穏やかな時間を増やすか」が一番の目標になります。ここでは、おうちでできる脱水ケア(皮下点滴)や、 吐き気を和らげるお薬の選択肢について一緒に見ていきましょう。
脱水から愛猫を守る「皮下点滴」という選択肢
慢性腎臓病が進行すると、おしっことして水分が過剰に出てしまうため、常に脱水状態になりやすくなります。脱水は気持ち悪さや便秘の原因になるため、背中の皮下に水分を入れる 「皮下点滴」が推奨されます。
最初は動物病院に通って点滴を受けるのが一般的です。獣医師が猫の様子や血液検査の結果を 見ながら、必要な水分量や頻度を判断してくれます。
頻度が増えたら検討したい「自宅での皮下点滴」
病気が進行し、数日に1回や毎日のように点滴が必要になってくると、通院そのものが 猫にとっても飼い主さんにとっても大きな負担になってしまいます。そのため、通院の ストレスを減らす目的で「自宅での皮下点滴」を提案されることがありますが、 「針を刺すなんて絶対に無理…」と不安になる方がほとんどです。
しかし、実際に自宅で皮下点滴を行っている約400人の飼い主さんを対象にした調査では、 心強い結果が出ています。実に85%の飼い主さんが、点滴の作業について「簡単だった」「ストレスは少なかった」「大丈夫だった」と回答し、 さらに89%が、猫自身についても「ストレスなく(あるいは許容範囲で)受け入れてくれた」と 答えています。
先輩飼い主さんたちが実践している「点滴のコツ」
同じ調査では、猫が少しでも快適に受け入れられるよう、飼い主さんたちが実践して 「効果があった」と感じている工夫も報告されています。
点滴の液を温める:冷たい液は嫌がることが多いため、人肌程度に温めます(温めた人の83%が「猫が受け入れやすくなった」と回答)。
終わった後のご褒美:点滴のあとにおやつをあげるなど、ポジティブな工夫を取り入れています(57%)。
針の太さや時間の工夫:針の太さ(20Gや18Gが多い)や、点滴にかかる時間(5分以内が最多)が 猫の許容度に影響したと、多くの飼い主さんが感じています。
吐き気と食欲低下のケア:我慢させずにお薬に頼る
ステージ3〜4になると、体内に溜まった老廃物が脳の「吐き気」を感じるセンサーを刺激し、 慢性的な吐き気や食欲不振を引き起こします。これらは猫の生活の質(QoL)を大きく 下げてしまうため、我慢させずに積極的にお薬でコントロールすることが推奨されています。代表的な選択肢を、日本での使われ方とあわせて見てみましょう。
カプロモレリン
商品名:エルーラ
2024年に日本で承認された液剤。慢性疾患の猫の食欲を直接刺激し、体重増加を助けます。
マロピタント
商品名:セレニア注 など
脳の吐き気センサーをブロックし、嘔吐の回数を明らかに減らすお薬。日本では注射での使用が中心です。
ミルタザピン
人用・輸入:ミラタズ軟膏 など
吐き気を抑えつつ食欲を増進させるお薬。日本では人用薬や輸入の塗り薬として使われることが多いです。
オンダンセトロン
人用:ゾフラン など
脳や腸に働きかけて、強い吐き気を抑えるお薬として使われます。
栄養チューブという「優しい選択」
お薬を使ってもどうしても食べられないときや、毎日のように無理やり口からお薬や水分を 入れることがお互いの負担になってしまう場合、「栄養チューブ(食道チューブや胃チューブなど)」という選択肢もあります。
「管をつけるなんて可哀想」と感じるかもしれませんが、チューブがあれば、猫が嫌がる お薬や水分、十分な栄養を、痛みやストレスなく確実に届けることができます。毎日の 「食べてくれない」という焦りや、無理やり飲ませる闘いから解放され、穏やかに撫でて あげる時間を増やすための前向きな選択として、多くの猫と飼い主さんを助けています。
まとめ:明日の診察室で聞きたいこと
終末期のケアは「何が正解か」ではなく、「愛猫と飼い主さんにとって、どの時間が一番穏やかか」で選んで大丈夫です。次回の診察では、ぜひこのように先生に尋ねてみてください。
診察室で、こう聞いてみる
「最近吐き気がある(ご飯を食べない)のですが、吐き気止めや食欲増進剤を試せますか?」
「通院のストレスを減らすために、自宅での皮下点滴に切り替えることは可能でしょうか?」
「お互いに無理なくお薬や水分をあげるために、栄養チューブのメリットとデメリットを教えてください。」
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参考文献
- International Renal Interest Society (IRIS). Treatment of Vomiting, Nausea and Inappetence in Cats with Chronic Kidney Disease (Elliott J, revised 2022). iris-kidney.com
- Cooley CM, Quimby JM, Caney SMA, Sieberg LG. Survey of owner subcutaneous fluid practices in cats with chronic kidney disease. J Feline Med Surg. 2018;20(10):884–890. doi.org
- Quimby JM, Brock WT, Moses K, Bolotin D, Patricelli K. Chronic use of maropitant for the management of vomiting and inappetence in cats with chronic kidney disease: a blinded, placebo-controlled clinical trial. J Feline Med Surg. 2015;17(8):692–697. doi.org
- Quimby JM, Lunn KF. Mirtazapine as an appetite stimulant and anti-emetic in cats with chronic kidney disease: a masked placebo-controlled crossover clinical trial. Vet J. 2013;197(3):651–655. doi.org
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- International Renal Interest Society (IRIS). Treatment Recommendations for CKD in Cats. 2023. iris-kidney.com
- 谷田奈津美. 動物薬事情報(4)新たに承認された動物用医薬品「エルーラ」(カプロモレリン酒石酸塩). 日本獣医師会雑誌. 2024;77(7):207.(令和6年2月8日承認・農林水産省動物医薬品検査所) vm.nval.go.jp
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