アイのページ案内
現在、承認申請が進んでいる腎臓病の新薬「FeliAIM」について、なぜ効くのかという仕組みや臨床データ、今後の実用化の見通しを解説します。
対象ステージ|ステージ3〜4(腎臓の数値が大きく上がってきた進行期)
自分の子のステージを確かめたい方はこちらこんな飼い主さんへ
- —愛猫が進行した腎臓病と診断され、これからの新しい治療の可能性を知っておきたい方
- —ニュースで話題の「AIM新薬」が今どうなっているのか、現状を把握しておきたい方
猫が腎臓病になりやすい理由
実は、猫は他の動物に比べて極めて腎臓病になりやすい動物です。その長年の謎だった原因が、「AIM」というタンパク質の働きにあることが判明しています。
本来、AIMは腎臓の通り道に溜まった死んだ細胞などの老廃物(ゴミ)に「目印」をつける役割を持っています。この目印がつくことで、体内の掃除屋(細胞)がゴミを認識して片付けてくれます。
しかし猫の場合、ほかの動物に比べてAIMが血液中の別の成分(IgM)と約1000倍も強く結びついており、いざという時に離れることができません。そのため、ゴミに目印をつけることができず、掃除されないゴミが尿の通り道に詰まったままになり、腎臓のダメージが進行してしまうことが分かりました。
データが示す新薬の効果
この「働かない猫のAIM」の代わりに、外から機能するAIMを点滴(静脈注射)で補うのが「FeliAIM」です。進行した慢性腎臓病(ステージ3の中でも、尿毒素が溜まってきた段階)の猫を対象にした臨床研究では、はっきりとした生存期間の違いが確認されました。
AIMを投与しなかった猫ちゃんが過ごせた期間は、ちょうど真ん中の子で167日(約5.5か月)でした。一方、2週間に1回のペースでAIMを投与した猫ちゃんでは、約1年(360日)が経った時点でも80%以上が良好な状態で過ごせていました。しかも、効果は生存期間だけにとどまりません。クレアチニンやSDMA、尿毒素の悪化を抑え、腎臓のダメージの進行を防ぐことも確認されています。
進行期(ステージ3b)の猫で、AIMを投与した子としなかった子の比較
※ 投与から180日(約半年)の時点では、AIM投与群は100%・非投与群は46%が生存。非投与群の生存中央値は167日でした。
治療のハードルと注意点
このように生存期間を延ばす効果が確認されている一方で、実際の治療として考えた場合、現段階ではいくつか知っておきたいハードルや注意点もあります。
- —通院が必要:飲み薬ではなく、静脈への注射(点滴)で行う治療です。おうちでは完結せず、研究では2週間に1回のペースで数回(6〜12回)の通院・投与が行われました。
- —費用の負担:タンパク質を使ったお薬は製造コストが高く、治療費が高額になりがちです。報道などでは「6回の注射で10〜15万円程度」と伝えられています(※開発元による想定であり、確定した価格ではありません)。
- —アレルギーのリスク:外からタンパク質を体に入れるため、まれにアレルギー(アナフィラキシー)が起こるリスクがあります。研究では事前にリスクが高い猫を除外し、慎重に観察しながら投与が行われました(この研究内では重篤な反応は出ていません)。
- —まだ分かっていないこと:今回のデータは少数の猫を対象とした研究段階のものです。効果がはっきり確認されたのは「毒素が溜まってきた進行期」であり、ごく初期や末期の猫への効果、1年以上の長期的な結果はまだ分かっていません。また、病気の原因そのものを治すのではなく、足りないAIMを定期的に補い続ける治療になります。
AIMの今後と、今できること
全国の動物病院で行われた治験(薬として正式に認可されるための試験)はすでに終了しており、開発元によれば、上記の臨床研究とほぼ同等の効果が得られたと報告されています。2026年4月には、農林水産省へ製造販売の承認申請が行われました。
社会的なニーズが高い新薬として迅速審査の対象になっており、早ければ2026年内から2027年初めにも実用化されるのではないかと期待されています。今できる一番のことは、かかりつけの先生と一緒に今の腎臓の負担を減らすケアを続けながら、最新の情報を待つことです。
※ ただし、承認の時期や可否は審査の結果によります。
まとめ:明日の診察室で聞きたいこと
このページの振り返り
- —猫の腎臓病は、体内のゴミ掃除を助けるAIMが正常に働かないことが大きな原因と考えられています。
- —進行した腎臓病の猫にAIMを補うと、腎臓のダメージを抑え生存期間が大きく延びたというデータが出ています。
- —新薬「FeliAIM」はすでに国へ承認申請され、2026年内〜2027年初の実用化が期待されています(審査中)。
新しい治療を待ち望む気持ちはとても自然なものです。そのうえで、今できるケアを積み重ねていくことが、これからの選択肢に備える一番の近道です。次回の診察では、ぜひこのように先生に尋ねてみてください。
診察室で、こう聞いてみる
「今のうちの子のステージで、腎臓の負担を減らすために今日からできる一番のケアは何でしょうか?」
「将来、AIMの治療が受けられるようになったとき、うちの子も対象になりそうでしょうか?」
※ 表示される数値は統計的な参考値であり、個別の診断を確定させるものではありません。 また、FeliAIM は現在、承認審査中の段階であり、実際の治療への導入時期や価格は 変動する可能性があります。
この病気の、ほかの記事
関連する便利ツール(無料・登録不要)
参考文献
- Tezuka T, Arakawa H, Kudo K, et al. A clinical impact of apoptosis inhibitor of macrophage on feline chronic kidney disease. Vet J. 2026;315:106545.(オープンアクセス) doi.org
- Sugisawa R, et al. Impact of feline AIM on the susceptibility of cats to renal disease. Sci Rep. 2016;6:35251.(オープンアクセス) doi.org
- 一般社団法人AIM医学研究所(IAM). 研究・開発トピックス(猫のAIM薬の治験開始・論文公開のお知らせ). iamaim.jp
- 産経新聞. <独自>ネコの腎臓病新薬、早ければ年内にも実用化へ 治験終了、4月には国に承認申請(2026年1月7日). sankei.com
- 時事通信. ネコの腎臓病薬、実用化迫る 承認申請終え、ヒト用も早期治験へ AIM医学研究所の宮崎徹所長.(治療費の想定額「6回で10〜15万円程度」に言及) jiji(news.yahoo.co.jp)
※ 本ページは申請中(未承認)の治療に関する情報を、執筆時点で公開されている論文・ 一次情報に基づき中立にまとめたものです。治療方針は必ずかかりつけの獣医師とご相談ください。