猫の高血圧症基本を見る

「血圧が高い」と言われたら?体への影響と治療の見通し

監修:あき(獣医師)最終更新 2026.07.10

アイのページ案内

4 分で読めます

血圧が高いと体の中で何が起きているのか、そしてお薬の治療でどこまで良くなる可能性があるのかを分かりやすく解説します。

こんな飼い主さんへ

  • 血圧が160以上と言われた方/高血圧で目が見えなくなると聞いて不安な方
  • 腎臓病で血圧に注意と言われた方/治療を始めるべきか迷っている方

猫ちゃんの血圧測定で「高血圧」と言われると、「人間と同じようなもの?」と疑問に思うかもしれません。ここでは、猫の高血圧が引き起こす本当の怖さと、治療による回復の見通しについてお話しします。

そもそも、猫の「高血圧」ってどんな状態?

血圧とは、血液が血管の壁をギュッと押す力のことです。これが高すぎる状態が続くと、常に血管がパンパンに張り詰めた状態になります。

人間の高血圧は生活習慣が原因になることが多いですが、猫ちゃんの場合は慢性腎臓病」や「甲状腺機能亢進症」といった別の病気が原因で引き起こされることがほとんどです。初期は無症状であることが多く、飼い主さんが気づかないうちに進行してしまうのが怖いところです。

治療を始める目安は「血圧160以上」

では、どのくらいの血圧から治療が必要なのでしょうか。国際的なガイドラインでは、上の血圧(収縮期血圧)が160mmHgを継続して超える場合、体にダメージを与えるリスクが高まるため、血圧を下げるお薬の開始が推奨されています。

収縮期血圧(上の血圧)とリスクの目安
150〜159 mmHg境界域(低リスク)

すぐにお薬が必要ではないことが多いですが、定期的な血圧チェックが推奨されます。

160〜179 mmHg高血圧(中リスク)

体へのダメージを防ぐため、血圧を下げる治療の開始が推奨されます。

180 mmHg 以上重度高血圧(高リスク)

目や脳などの臓器に深刻なダメージを与える危険性が高く、早急な治療が必要です。

高血圧が壊すもの:細い血管へのダメージ

高い血圧が長期間続くと、細い血管が集中している目・腎臓・脳・心臓に強い負担がかかり、深刻なダメージを引き起こします(これを標的臓器障害と呼びます)。

特に飼い主さんが気づきやすいのが、目への影響です。強い圧力に耐えきれなくなった目の奥の細い血管が破れて出血したり、目の奥の膜がはがれてしまう(網膜剥離)ことで、ある日突然目が見えなくなることがあります。

高血圧の猫で目の異常が見つかる割合

100匹の猫のうち
59目の奥の出血や、網膜がはがれるなどの異常が見つかりました

治療を始めると、失われた視力は戻る?

「すでに目が見えなくなってしまったら、もう手遅れなのでは…」と思うかもしれません。しかし、高血圧が原因で目が見えなくなっている場合、早期に血圧を下げることで網膜が再びくっつき、視力が回復する可能性が残されています。

失明状態からの視力回復率

100匹の猫のうち
58視力を回復したと報告されています

別の調査でも、血圧を下げるお薬の治療を受けた猫の90%以上で目の出血などの症状に改善が見られ、治療開始から約1ヶ月(平均36日)で明確な変化が現れることがわかっています。

完全に視力を失ってから長期間経過している場合や、症状が重すぎる場合は回復が難しいこともありますが、決して諦めずに血圧のコントロールを始めることが大切です。

使われるお薬の種類

猫の高血圧治療では、以下のようなお薬が単独、あるいは組み合わせて使われます。

高血圧治療で使われる、主なお薬

アムロジピン

商品名:アモディップ錠、ノルバスク など

血管を広げて血圧を強力に下げるお薬で、猫の高血圧治療において真っ先に選ばれるお薬です。日本では長らく人間用のお薬の転用が一般的でしたが、2026年に猫専用の「アモディップ錠」が国内承認されました。

テルミサルタン

商品名:セミントラ

もともと慢性腎臓病のタンパク尿を減らすお薬として知られていますが、高濃度タイプ(10mg/mL経口液)は猫の高血圧の治療薬としても承認されています。腎臓病を合併している猫ちゃんでよく選択されます。

治療の目標は、血圧を160mmHg未満に維持することです。可能であれば、140mmHg未満を目指すことが最も安全とされています。お薬の効き方には個体差があるため、飲み始めは定期的に血圧を測り、お薬の量を調整していきます。

まとめ:明日の診察室で聞きたいこと

このページの振り返り

  • 猫の高血圧は・腎臓・脳・心臓の血管に深刻なダメージを与える
  • 上の血圧が160mmHgを超えたら、お薬による治療を検討する
  • 早期に血圧をコントロールすれば、失われた視力が回復する可能性がある
  • 治療にはアムロジピン(アモディップ錠)やテルミサルタン(セミントラ)などのお薬を使う

診察室で、こう聞いてみる

今の血圧はいくつですか? 治療を始める基準(160mmHg)を超えていますか?

目の奥(眼底)に出血や異常は起きていませんか?

血圧を下げるために、どのお薬(アムロジピンやテルミサルタンなど)から始めるのがうちの子には合っていますか?

表示される数値は統計的な参考値であり、個別の診断を確定させるものではありません。

あとでマイページからいつでも見返せます

Tool

高血圧症(猫)のケアを akiaia で記録する

血圧の数値やお薬の変更を1回1件で記録し、診察室でそのまま先生に見せられます。

参考文献

  • Taylor SS, Sparkes AH, Briscoe K, et al. ISFM Consensus Guidelines on the Diagnosis and Management of Hypertension in Cats. J Feline Med Surg. 2017;19(3):288-303. doi.org
  • Acierno MJ, Brown S, Coleman AE, et al. ACVIM consensus statement: Guidelines for the identification, evaluation, and management of systemic hypertension in dogs and cats. J Vet Intern Med. 2018;32(6):1803–1822. doi.org
  • Cirla A, Drigo M, Andreani V, Barsotti G. Ocular fundus abnormalities in cats affected by systemic hypertension: Prevalence, characterization, and outcome of treatment. Vet Ophthalmol. 2021;24(2):185-194. doi.org
  • Young WM, Zheng C, Davidson MG, Westermeyer HD. Visual outcome in cats with hypertensive chorioretinopathy. Vet Ophthalmol. 2019;22(2):161-167. doi.org

※ 表示される数値は統計的な参考値であり、個別の診断を確定させるものではありません。 本ページの情報は獣医師が監修していますが、治療方針は必ずかかりつけの獣医師とご相談ください。